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2011.12.1
40年以上前のアフガニスタンは緑の大地に覆われていました。7千メートル級の山々の雪どけ水が大河となり無数のカレーズ(伝統的な地下水路)が大地を潤し、豊かな農村地帯を形成していました。しかし、度重なる異常気象が人々を苦しめ、農地は砂漠化していきます。このアフガニスタンで28年間にわたる医療支援と水源事業、農業復興に取り組んでいるペシャワール会の中村 哲医師の講演を聴く機会がありました。山岳地帯に診療所を開設し治療のかたわら、清潔な水の確保のため井戸を掘ります。水害や干ばつに苦しむ人々にとって命をつなぐ水、清潔な水は多くの病を治すことになります。そして、2000年アフガンを大旱魃が襲い、人々がアフガンの大地を離れていきます。翌年の9.11同時多発テロ事件による報復爆撃が追い打ちをかけ、200万を超える人々が難民化していきます。そこで、「百の診療所より一本の用水路」を合言葉に、この灌漑事業がその後の活動の大きな柱となります。
「アフガン問題は、政治や軍事問題ではない。パンと水の問題である。命の尊さこそ普遍的な事実である。」世界がテロとの戦いに突き進み、日本でも自衛隊の派遣が叫ばれていた時であり、「自民党だとか共産党だとか問わず、一人の父親、母親としての皆さんに訴える。くりかえすが、大旱魃と飢餓対策こそが緊急課題である。」中村 哲医師の国会での発言は、多くの人々の心を動かすこととなりました。
現地の人々と作り上げた用水路には、日本の伝統的な河川技術が使われています。暴れ川を治める石出し水制、霞堤、護岸を守る蛇籠、堤防沿いに柳の木が植えられ、さながら日本の原風景をみるようです。今、不可能と言われた25.5キロのマルワリード用水路が完成し、60万の人々の命を育む水が大地を潤しています。60万本の植樹が、死の沙漠を緑の楽園に変えました。これこそが新時代への萌芽、希望をかき立てる自然からのメッセージだと中村 哲さんは言います。
日本では、戦後を上回る205万人の生活保護者を抱え、東日本大震災復興費や原子力災害の莫大な社会保障費に悩まされています。日本の現状や世界を覆う貧困や飢餓を思う時、ペシャワール会のアフガン復興に多くを学ぶことができると思います。
「アフガンは明日の世界の現状、日本の未来でもある。」「慈しみの心を身近な人に」そんな中村 哲さんの言葉に心を強く揺すぶられました。弱い者を助け、命を尊重する・・・変わらぬ大義がここにあります。
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『医者、用水路を拓く』
著/ 中村 哲 (石風社刊)
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